坂田三吉の奇手と知られている、初手九四歩。
俺は将棋を指さないので、それを知ったのはもちろん織田作之助の「可能性の文学」でだ。
普通ならありえない「阿呆な将棋」を一世一代の対局で打っての大惨敗。
織田作はそこに文学の可能性を見た。
まあ、俺が書いているのは文学ではないけれど、そういう初手に憧れがありました。そのうちとんでもなく阿呆な1行目から書きはじめ、見事着地してやりたい、と
本日いよいよ『定、吉 ふたり』(双葉文庫)が発売になりますが、1行目だけでもいいので読んでください。
これが俺の初手九四歩なり、というのが書けたと思ってます。
阿部定は無頼派のファム・ファタールでもあります。
内容は坂口安吾へのオマージュがちらほら。
近藤ようこさんのカバーイラストがマジ泣けたっす。