トップページ日記2010-08-25 > びっくりした

びっくりした

3カ月くらい前のことでしょうかね。

たまたま後輩作家(といっても20冊以上著作もあるし、年もそう変わらない)と飲む機会があり、偉そうに先輩風吹かせて新しい版元への持ちこみ方をアドバイスしたことがありました。

2パターンのプロットを編集者に送って没になったという彼に対し、泥酔していた僕は「そんな売りこみ方して採用されるわけねえじゃん!」と大炎上。その編集者がたまたま僕の担当者だったこともあり、言いたい放題言ってしまいました。

「A案B案どっちも書けますがどっちがお好みでしょうかって、そりゃあ企業の顔色うかがってる広告屋のやり方だよ。じゃなきゃ無個性なライターだ。作家だったら1本で勝負しなきゃダメなんだって。これしかできない、これがやりたい、っていう熱いハートがなけりゃ編集者の心なんて動くわけない。だいたい、会ったこともない編集者にプロット送って仕事取ろうっていう発想が全然ダメだ。プロットと本文はワンセットが基本。楽しちゃダメなんだよ。そんなに書くのが面倒なら物書きなんてやめちまえ!」

と、文字で書けば数行で終わる話を3時間くらい延々としゃべりつづけた午前3時の新宿2丁目。

まあ、僕はいままでどこに行っても下っ端だったので、先輩風吹かせられるのが嬉しくて調子に乗ってたわけですね。初対面なのに悪いことしたなー、と反省してたんですが、その後、彼が昭和プロレスのファンだとわかり、彼がプロットを送った編集者もディープな昭和プロレスのファンなので、じゃあプロレス話でもしましょうかって、飲むことになってたわけですよ。

僕は「この前は悪かったね。言いすぎたよ。ごめんね」と謝ろうと思っていたんですが、口から出てきたのは「まさかこんなチャンスに手ぶらで来てないだろうな? 本文書いてきたんだろ」でした。つくづくひどいと自分でも思いますが、もちろん軽いジョークのつもりです。彼にしてもそれなりに売れてる作家なので、持ちこみのための原稿を2、3カ月で書けるわけがないですからね。

でも……。

彼は……。

ニヤリと笑って、鞄から350枚の完成原稿を出したわけですよ。

痺れましたね。

版元にも版元の都合があり、書いたからってすぐに出るわけがないことくらい、彼だってよくわかってるわけですよ。しかも、万が一気に入られてもたいていはイチからプロットのつくり直しで、持ちこみ原稿のお蔵入りはほぼ確実。それがわかってて、仕事の合間に350枚書くなんて……。

こんなやつが実力発揮したら絶対すぐに追い抜かれると思った僕は、酒で潰してやろうと作戦変更。ところが、酒も強い強い。逆にこっちが潰されてギャフン。

いやあ、久しぶりに感動したなー。

僕も持ちこみ原稿書きたくなったもんなー。

負けてられないよ、本当に。

カテゴリー: [日記] - 13:23:26

ページ管理者:草凪 優
イラスト:小玉 英章