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黄昏色のハイボール

なんか年が開けてからアクセス数がちょこっとだけあがり気味なので、罪悪感にかられて書いてみることにします。
でも、書くことないんですよ、正味の話が。
文庫書き下ろしは4月まで出ないし、短編などの新作を発表する予定もなし(WEB連載「ナイショのアナウンス室」はやってます)。
遊んでるわけじゃないんですけどね~。
作品のほうは桜の季節までしばしお待ちくださいませ。

で、最近はなにやってるかといいますと……。
相変わらず酒ばっかり飲んでるわけですが、ここのところ浅草以外で飲むことが多いです。
アル中天国・浅草にも弱点があって、僕が知るかぎりそれは3つ。キャバクラと豚ホルモンとハイボールです。
キャバクラはちょっと置いといて、後ろのふたつを求める場合、隅田川を渡って北上することになります。墨田区、葛飾区と……。

浅草名物の煮込みは牛スジの煮込みがメインで、これはザラメを使ったしょうゆ味が正当。すき焼きに近い味つけなのですが、僕はどっちかっていうと、豚のモツを使った味噌味の煮込みが好きなんですね。これが浅草は弱い。おいしいところがまったくない(知らないだけかもしれませんが)。ところが、墨田区、葛飾区となると、豚モツ味噌煮込みの本場なわけです。もちろんモツ焼きも。浅草より断然パンチが効いてて旨い。しかも安い。

そして、脂っこいモツを食べた口はハイボールで洗わなくてはいけません。
墨田区、葛飾区ではレモンハイみたいな軟弱なものは人気がありません。みんな、ハイボールと呼ばれるものを飲んでます。琥珀色をしていて、炭酸が強く、氷が入ってない酎ハイですね。いわゆる下町ハイボール。レモンハイより甘くなくて、ただの焼酎の炭酸割りよりかは味がある。

西東京に住んでる人は、たぶん見たこともないと思います。他県にあるのかどうかよくわかりませんが、おそらく東東京にしかない完全にローカルなお酒でしょう。戦後の食糧難時代にウイスキー・ハイボールのフェイクとしてつくられたもので、琥珀色をしているのは謎のエキスが入ってるからです(梅をベースにしたもので、市販されてるものもあるんですけど、店によってちょっとずつ違う気がする)。ホッピーよりもハードコア。男の酒ですね。肉体労働でヘトヘトになった人がカウンターに座って「ボールちょうだい」とつぶやく姿に痺れます。昨日、東京は初雪で、カウンターで働いているおじいさんはダウンジャケットを着てましたが(笑)、すきま風がびゅんびゅん入ってくる寒さのなかでも「ボールでいい?」と座った瞬間につくられました。まさに下町のソウルフードならぬソウルドリンク。

で、この下町ハイボール、浅草にもあることはあるのですが、なんか水っぽくて美味しくない。そこへいくと、墨田区のやつはガツンとしてる。アルコールが異常に濃くて、強い炭酸を使ってるんです。昨日飲んだ店は、そんな墨田エリアのなかでもとびきり強いボールを出すところでした。一杯目を飲み干したら、すきま風が気にならなくなってましたからね。場所は旧・玉ノ井と鳩の街の近く。かつては玉ノ井のなかのスタンドバーで、ウイスキーをメインに出していたといいます。街娼が仕事の合間に一杯ひっかけてたんでしょう。「これは当時使ってたもんだよ」とおじいさんが小さなショットグラスを出してくれて、玉ノ井といえば「抜けられます」、おお、吉行淳之介! と感激した僕は、だったらそれでウイスキーを一杯いただきますと言うと、「そりゃあこの前買ってきたやつだろ」とおばあさんが言ったり(笑)。この前買ってきたにしては年季が入ったグラスでしたが、なんかおふたりとも記憶が曖昧なようで……。

曲がりなりにもいまだに色を売って栄えている吉原とは違い、もうなくなってしまった玉ノ井、鳩の街。
僕はもちろんどちらでも遊んだことがありませんが、いろいろ思うところがありました。

カテゴリー: [日記] - 08:04:39

ページ管理者:草凪 優
イラスト:小玉 英章