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たまには普通の日記ふうに

日記には新作の情報だけじゃなくて、生活面についてのあれこれを書いたほうがいいよ、読者はそういうのも読みたいんだよ、とよく助言を受けます。

でもはっきり言って、小説家の生活なんてものすごく単調で、たとえば――起きてご飯食べて(自分でつくるか、近所に食べに行くか)、小説書いて、ちょっと昼寝してまた書いて、疲れたら酒飲んで(家で飲むか、近所に飲みに行くか)寝る、ということの繰り返しなわけです。

小説の進行に気をとらわれていると、やらなきゃいけない雑用も、葉書一枚出すことさえひどく億劫で、基本的には収集がつかなくなる直前まで放置。まあ、一日中誰とも口をきかないなんてこともザラなわけです。

そんな毎日のなかで唯一の楽しみと言えるのは、酒を飲むことくらい。
友達もいないし、飲みはじめる時間も遅いので、基本的にはひとりで近所に飲みにいきます。
いまは浅草を舞台にした『色街そだち』の続編を書いているので、観音裏に足が向くことが多くて、馴染みの店もいろいろあるんですが、新規開拓も楽しんでいます。

馴染みの店はそれはそれでいいし、気に入ってるから馴染んでるわけですが、そういうところに行くと世間話をしなくちゃいけなくて、そういう気分じゃないときが最近は多い。小説が佳境に入ってくると、ひとりでどんより飲みたくなり、かといって家でひとりで飲んでいると煮詰まってくるという、なんだか我が儘な状態になるわけです。

で、昨日は千束方面(吉原のすぐ側)で、いい感じの韓国料理屋を見つけました。
ひとりで飲むときは、料理の味の良し悪しより、すいている店がいいんですね。満員御礼の活気にあふれたお店じゃ、どんよりできなませんから。

そういう意味でその店は久々のヒットという感じで、テーブル席が四つあるのに、そのひとつで僕が飲んでいる以外は、たまに韓国語を話すおじさんが来て冷麺かなにかをちゃっちゃと食べて帰っていく。メニューもハングル表記の脇に下手なカタカナの日本語が並んでいるという、韓国人御用達の店だったわけです。オモニは50代くらいのちょっと顔の厳つい人。彼女の手作りだという豚足もキムチもチゲも、日本人向けの味づけにしていなくて、辛いものが好きな僕の口には相性抜群。

まるで異国の街で飲んでいるような心地よい孤独を感じつつ、久々にどんよりを満喫しました。
客が僕しかいなくなると、オモニは側の椅子に腰かけて、ふたりでテレビを見ます。
8月15日だったから、終戦記念日がらみの番組しかやってませんでしたけどね。
会話がはずまなかったのは、オモニが片言の日本語しか話せないからだけじゃなかったんでしょう。
「僕はおばあちゃん子だったから、子供のころは毎年8月15日になるとすいとんを食べさせられたんですよ」とオモニに言おうかどうしようか迷ったあげく言わないで、「おいしかったです。また来ます」と頭をさげて店を出ました。

カテゴリー: [日記] - 13:55:56

ページ管理者:草凪 優
イラスト:小玉 英章